「不死身の特攻兵」

2018年4月5日「放送大学の本棚」への投稿

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鴻上尚史,2017,「不死身の特攻兵」,講談社現代新書

「体当たりで死んでこい」という命令に反して何度も生還してきた特攻兵がいた。鴻上さんが近年まで生きていたこの元特攻兵を取材したことを原点に書かれた本です。その当時の状況は著者が関連の資料からストーリーを組み立て直して語られます。それらは「なんと理不尽な」とか「あり得べからざる」という怒りがかなり混ざったトーンを持っています。案外本人は、もはや誰を憎むでもなく最近まで淡々と生きてきています。当時何度も生還できた(その環境に抗ってきた)ことを本人は「寿命だった」と表現していますが、この実感がこの本の特色になってると思いました。

最後の章で鴻上さんは特攻についての考察を加えています。その一つ一つに私は著者と同じ心情になりましたが、それだけで済ますわけにもいかないとも思いました。

「特攻」の頃に見られた光景やその原型が今なお残っていたり、形を変えて再現されたりしているのを強く感じます。高校野球はなぜか戦時中の空気を今だに漂わせています(この著者も同じような感想を抱いているようです)。最近の「忖度」にしろ「改竄」にしろそれをとりまく精神風土はあの時代から連綿と引き継がれてきたもののように感じます。むしろヤバいのは我々自身がどこかにまだ(無自覚ながら)そういう精神を持っているということなのではないか。

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