『人口と日本経済 – 長寿、イノベーション、経済成長』

2017年8月16日「放送大学の本棚」への投稿

(以下)—————————————————–

吉川 洋 『人口と日本経済 – 長寿、イノベーション、経済成長」
中公新書 2016年
日本経済

少子化で日本の経済力がこれから下降線をたどることが懸念されている現状に、経済学の立場からこれをどう把握するのかといったことがこの本のテーマとなっています。有名なマルサスの人口論では、人口は指数関数的に増えていくのに対して食物の生産はせいぜい等比級数的な増加しか期待できないため、やがては破局を迎えるということになっています。しかし、その後、ブレンターノは人口動態調査から、所得の伸びに伴って出生率が低下していくことを見出しました。今や経済的に成長した国はどこでもこのような傾向が認められています。マルサスは純粋に理論だけで人口の爆発的増加の危機を予想しましたが、経済が豊かになり選択の自由が生まれると、心理学的要因が発生して単純な予想を裏切るのだと思います。このような教訓から経済学が構成されている要素を考えると、原因と結果がすストレートに関数で表されることなく、その間に集団心理という要素が入り込むものなんだなあと気づかされます。

今日本が悩んでいるのは「少子化」というより「低成長」なのだと思います。この本で改めてその重要さに気づいたのがロジスティック曲線です。あらゆる需要は成長とともに指数関数的に増加しますが、市場は有限なのでやがて飽和点に近づくに従って鈍化しやがては成長がストップします。経済の成長を遂げた国は例外なく成長が鈍化していくということでしょう。国民の所得が増え、生活を享受したいがため子作りには消極的になっていくという定式化ができるのでしょう。

この本ではこの現状に対してごく常識的な感想が述べられているに過ぎませんが、これをきっかけにして少し踏み込んだ展望を探ってみたくなりました。以下、思いつくままに書いて見ますと….。

少子化はこういう環境に社会心理的要因が働いて起こるのだから、それを直接コントロールするのは土台無理なのではなかろうか?むしろ低成長のままで変動の乏しい今の経済自体を作り変えていった方がいい。日本の経済は今伸びきったゴムのような状態で、これからさらに成長せよと言われてももう限界がきている。再びゴムを伸ばしたければ方法は2つしかない。一つは別のゴムを見つけてくること。(イノベーションも部分的にこれに該当するだろう。しかしこれは一時しのぎに過ぎないんじゃ?)もう一つは、伸びきったゴムを一旦縮めること。(これはなんか方法があるかも。)伸びたり縮んだりのサイクルを作れないか(熱力学のカルノーサイクルみたいに)。溜め込んだお金を吐き出して消費に専念することがこれに当たるのかもしれない。ドカンと消費して次の需要拡大の土台を作っていく。(….などと妄想はこの本が言ってることとは無関係に広がっていきます。)